おーとりゆーきのブログを使わざるを得ない

アクセスカウンタ

zoom RSS ティル・ナ・ノーグ〜悠久の仁〜 をもてあます#3

<<   作成日時 : 2009/05/10 19:43   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

#### とある英雄妖精の手記 ####

いつまでも同じ面子で旅を出来るとは、思っていなかったし
やがて来るであろう別れが、こんなに早く来るとも思っていなかった。

黒猫のナムーニはケットシー族だ。知能は高くて身が軽く、小さな身体
から素早く繰り出される攻撃でフォフィと共に多くの敵を倒してきた。
その綺麗な毛並みと愛嬌のある仕草は皆を和ませ、野生の勘で誰よりも
早く敵の接近を知らせ、罠の在り処を教えてくれた。
彼女と俺たちは言葉は通じないが、確かに意思は伝わっていた。

しかし彼女には弱点があった。その身体は小妖精のように小さくひ弱で
敵の武器を弾くような強靭な皮膚も無ければ、ケットシーの身体に
合うような防具も存在しない。ゆえに敵の攻撃に晒されるとその一撃
が致命傷となる事が十二分に起こりうる・・・いや、現にそうだった。
敵を倒し意気揚々と戻ってくるその小さな身体が傷だらけだった事は
幾度もあった。急いで回復魔法をかけてやると喉を鳴らして身体を
摺り寄せてくれるのだが、その小さな身体が血に汚れてるのが辛かった。
世界中の誰よりも優しいアルセイドのマロフォアが、泣き出したいのを
我慢して懸命にペフェミVを唱える姿は見ている側も辛く、ナムーニが
狂戦士との交戦後息も絶え絶えでかろうじて生きている程の深手を
負った時は激しく取り乱し、魔法を唱えるのもままならなかった程だ。

とある日俺たちは、何者かに拉致され囚われていたのを助け出した
双子の姫君の片割れであるマファ姫を、とある事情でパーティに迎え入れ
なければならなくなった。しかし余分にメンバーを加えられる余裕は
俺たちにはなく、誰かに交代して貰うしか無かった。
・・・正直なところ、皆がナムーニを立派な遊撃手として認めていた反面、
いつ命を落とすかもしれない不安を抱えていた。
別れたく無いが、一緒に戦い続けるのも辛い。そんな二律背反に苦しんでいた。

俺には皆を率いるリーダーとして決断を下す責任がある。
暫し考えた結果、ナムーニに交代してもらう事にした。
これは彼女の身を案じての事で、今後激しくなるであろう戦いに
これ以上危険な目に合わせたくない、小さなナムーニが死ぬのを
見たくないから、と彼女に何度も言い聞かせる。
これは紛れも無い本心だし、実のところ近い将来にナムーニを
引退させる事も考えていたのだ。

彼女は嫌がっていた、小首を傾げてじっと見つめている。
「どうして」「ともだちでしょ」「いっしょがいい」「すてないで」
そんな意思が見えた気がするし、眼がちょっと怒っていたような気もする。
俺も彼女も頑固だったが、やがて彼女のほうが折れた。
その姿は思っていたより落ち込んだ風でも無く、俺の手首を一度ガリッと
引っ掻いた後、背を向けてどこかに去っていった。途中一度だけ俺たちの
ほうを振り返ったが、フォフィを除いて誰もその姿を直視する事は
出来なかった。フォフィは同じ獣族の戦士として彼女を認めていたから
しっかり見送ったらしいが、あの時はなにやら視界がぼやけてロクに
見えていなかったよと、笑いながら後で教えてくれた。
俺の手首に残った爪痕からは血が滲んでいたが、あまり痛みは
感じなかった。傷の痛みなんてとうの昔に慣れてしまっていたし、
それ以上の後味の悪いなにかに苦しんでいたからだ。

代わりに入ったマファ姫は、暫くの間は結果として自分がナムーニを
追い出してしまった事による居心地の悪さと申し訳無さで、大分辛そう
だったが王族としての誇りと生来の気丈さか、やがてナムーニにも
負けない程の活躍を見せるようになった。

今でも森を歩いているとたまにナムーニに出会うことがある。
俺たちの姿を見かけると嬉しそうに尻尾をくねらせてくれるが果たして、
自分を捨てて麗しき姫君を選んだ俺たちが野垂れ死ぬのが待ち遠しいのか
それとも久方の再会が嬉しいのかは判らない。
そしてその姿はあの頃と全く変わっていない、むしろ相も変わらず戦い続ける
俺たちの、傷痕と奪った命の数が増えているだけだった。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ティル・ナ・ノーグ〜悠久の仁〜 をもてあます#3 おーとりゆーきのブログを使わざるを得ない/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる